HOME >> アーカイブ >> 記事 >> 電撃プレイステーションVol.465 浜渦正志さんインタビュー

記事

TIPS

電撃プレイステーション
アスキー・メディアワークスが月2回発行するゲーム専門誌。

アーカイブ
電撃プレイステーションVol.465 浜渦正志さんインタビュー
掲載:2010年2月12日号
『FFXIII』で目指した音楽とは
──
曲の話をうかがう前に、まず、浜渦さんが作曲家になられた経緯を教えてください。
浜渦
もともと『FF』や『ドラゴンクエスト』といったRPGが好きなんですね。
ゲームを遊びながら「自分でもゲームの音楽を作りたい」と思っていました。
元から音楽自体好きだったのですが、将来的な仕事にしようと思ったのは、
やはり好きなゲーム音楽にかかわりたかったからです。
苦労するとは思っていましたが、仕事を始めた頃はたいへんなことばかりでしたね。
──
それでは昔からの夢を叶えたということになりますね。
浜渦
そうですね。
ただ、ここまでくるのにはやっぱり苦労しましたね。
僕が現役で遊んでいたいわゆるファミコンなどは、
同時発音が3音までの内臓音源でしたが、僕が入社した頃は
ストリーミング(音楽データを読み込みながら再生する方式)が主流になってきて、
CDと替わらないクオリティが求められていました。
しっかり音楽のことを勉強しないとついていけない風潮でしたね。
私は打ち込みが出来れば音楽が作れると思っていたくらいだったので……。
ゲーム音楽業界を正直あなどっていました(笑)。
──
確かに、昔と現在では音楽の形も変わりましたね。
浜渦
でも音楽の本質的な部分は、技術の向上で変わるものではないと思います。
すぎやまこういちさんが手がけた『ドラゴンクエスト』の曲やバッハの音楽に、
僕はとても感銘を受けたのですが、同時発音数は少なくても、
豊かな和声で広がりのある音楽を作り出していますよね。
根本的な部分がしっかりしていれば深みのある音楽を聴かせられるのだと、
これらの音楽を聴いていて強く感じました。
この先も、本質的な音楽のよさを追求していこうと思います。
──
『FFXIII』の曲についてうかがいますが、
制作に関して、どんなものを求められましたか?
浜渦
2006年のE3で初めてお披露目する音楽を作っていたときに、
鳥山さん(ディレクターの鳥山求氏)から
「とにかく一新された『FF』を目指したい」ということを聞かされましたね。
そのなかで、"ハイブリッド感"という意見で一致しました。
次世代機ということで先進的なサウンド、フルオーケストラの採用、
壮大な物語にふさわしいメロディ構成といった要素を1つにまとめて欲しいと。
──
その映像で流れた曲は?
浜渦
「閃光」というノーバルバトルで使われている曲ですね。
あの曲はもともとその映像用に作ったものだったのですが、
好評をいただいたということで、そのままノーマルバトルの曲として
切り出して使うことになったんです。
──
ゲーム全体を通してかなりの数の曲を制作されたと思いますが、
なかにはボツになったものも?
浜渦
もっとこうして欲しいなどの指示はありましたが、
完全なボツというのはなかったと思います。
ただ、体験版用に作った曲のなかで、
ちょっとゲームの雰囲気に合っていないということで、
一時、お蔵入りした曲があります。
あのときは僕もゲームの世界観をはっきりつかみきっておらず、
ちょっと元気よく作りすぎたという感があって。
でも、開発終盤になったときに、ゲーム起動時に最初に流れる音楽を
どうするかという話になりまして、そのときにお蔵入りしかけたその曲を
リアレンジして持っていったら採用されたということがありました。
──
その曲というのは?
浜渦
「FINAL FANTASY XIII プレリュード」と、
それをさらにアレンジした「FINAL FANTASY XIII 〜奇跡〜」という曲です。
ちょうど、サウンドトラックの頭と最後のほうに収まっています。
ボツになりかけた曲が、最終的にゲームの音楽全体をまとめる形になって、
何だか運命的なものを感じますね(笑)。
──
今回は戦闘勝利時に流れるおなじみのファンファーレなどが変わりましたが、
これは先ほど言った"一新"の一例なのでしょうか?
浜渦
いえ、それを意識してなくしたわけではないんです。
本作のファンファーレは開発初期の頃に試験的に作ったものなのですが、
そのまま製品版で使われることになりました。
今回はバトルが終わってからバトルリザルトに移るまでの
テンポのよさも重視していて、それを考えたとき、
今までのファンファーレの感じだと少し長く感じたんですね。
それで、テンポを崩すくらいなら最初に作った曲でいこうという話になったんです。
ですから、別に昔のものはなくしてしまおうという気持ちがあったわけではないですよ。
──
サウンドトラックには各キャラクターのテーマ曲が収録されていますが、
これらはキャラクターの設定やイラストから
イメージを膨らませて作曲されたのでしょうか?
浜渦
じつは、必ずしも「このキャラクターだからこういう曲にしよう」とは
考えて作ってはいないんですね。
唯一はっきりそうしたのは、「スノウのテーマ」くらいでしょうか。
例えば「ファングのテーマ」は、どこかの場面で使うだろうなあと思って
作曲したものが、ゲーム中に反映されたときに、
たまたまファングが活躍するシーンだったんです。
それがしだいにファングのテーマとして定着していった感じなんです。
「ヴァニラのテーマ」に関しても、元々ヴァニラのイベントシーン用に作った曲でした。
──
ノーチラスで流れるチョコボのテーマソングなど、
歌の入った曲がありますが、歌詞の制作はどなたが?
浜渦
基本的にゲーム中の合唱曲などは、
鳥山さんが日本語で歌詞を書いたものをラテン語に翻訳しています。
チョコボの曲やサンレス水郷などで流れる歌に関しては、
鳥山さんが歌の大きなイメージを作り、
あとは歌手の方が歌いやすいように修正していった感じですね。
──
それでは最後に読者へのメッセージをお願いします。
浜渦
発売されたサウンドトラックは、収録されている曲の並び順なども
こだわっていまして、4枚組のボリュームですが
長時間聴いていても飽きない構成になっていると思います。
ぜひ聴いてみてください。
End of Documents.